はじめに
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文章力アップを目指す方が、本書の内容を納得の上で購入していただくために、総合科学出版にOKをもらい、本書の一部を公開しました!
まずは、「はじめに」です。
目次
はじめに
この本を読み終わったとき、あなたは今までと変わったかたちで世界を認識するだろう。
「ハァ!? これって、たかだか文章術だろ? そんな効果あるわけないじゃん!」
……そう、思っただろうか?
確かに、たかが文章術。
しかし、されど文章術。
あなたも、私も、社会の中で生きる人間はみな、“言葉”によって世界を認識している。
夕焼け空の風景は目で見て認識するが、認識する際には頭で「この夕焼け、キレイだな」という言葉を作り出す。
「ニャー」という鳴き声は耳で聴いて認識するが、認識する際には頭で「猫が鳴いている」という言葉を作り出す。
だから、言葉の使い方が変化すれば、それに伴い頭で認識する世界の姿もまた、変化するのだ。
実際、バイリンガルの人はどの国の言語を使うかによって、性格が変化するという研究結果も存在している。
では読み終わった後、あなたの見る世界はどう変わるのか?
ズバリ、あなたの見る世界は「文章の力で変えられる世界」になる。
「世界を文章の力で変えられるだって?」と驚いたかもしれない。
でも、思い出してほしい。あなたも私も、我々はなぜ文章を書くのだろう?
メモや日記など、自分さえ読めればいいという一部の文章を除き、たいていは、ほかの人のアクションを促すためではないだろうか。
メール、チャット、プレゼン資料、企画書、ブログの記事、書籍の原稿……などなど、実際に文章を書く場面を思い出してほしい。
「来週末までに企画書を作成してください」という物理的な行動から、「私に好意を持ってください」という精神的な動きに至るまで、そこで書かれているのは、ほかの人にこう動いてほしいという要請のはずだ。
つまり文章というのは、人に動いてもらうための手段として使われるもの。なので、文章力がつけばつくほど、人が動いてくれる確率はアップする。
さらに、文章が高速で書けたらどうだろう? 当然ながら、早く書ければそれだけ多くの文章を書けるので、それだけ多くの人に行動要請が可能だ。
そして、この世界を作っているのは人の行動と心の動きにほかならない。ということは、文章術の知識が手に入れば、文章の力で世界を変えることができるというワケ。
文章の力で企画書を作り、自分の思いを実現することもできる。
文章の力で自慢の商品を、その商品を欲する人々へと届けることもできる。もちろん、文章そのもので稼ぐことだって可能だ。
逆を言えば「この先もずっとずっと、今までと同じ世界を見ていたい!」とあなたが願うならば、今この瞬間、この本は「ポイ!」してしまったほうがイイだろう。
読み進めるだけ時間を無駄にしてしまううえ、最後まで読んでしまったらあなたの世界が変わってしまう。そうなってしまったらもう、取り返しがつかない。さあ、本を閉じて目に触れない場所へしまおうじゃないか!
………………
……おっと……まだこの文章を見てる!? OKOK !
「そりゃ、お金出して本を買ったんだから、読むでしょ?」
いやいや、そう思うかもしれないが、我々の心の中には「現状維持バイアス」というものがある……と心理学では言われている。
現状維持バイアスというのは、「今の自分の環境を維持したい!」という“無意識の力”だ。
日常の中で「ここを変えたい!」と思っても、勉強にせよダイエットにせよ変化のための行動というのはたいてい、苦労を伴う。
そもそも「新たな環境に飛び込む」というのは、人間にとって大変ストレスになること。
なので、今の環境にちょっとぐらいの不満があっても、変化を拒み、今の環境を選んでしまう……という心の力が働くのだ。
だけどあなたは、その最初のハードルを乗り越えた。
そんなあなたにこの本がもたらす具体的な効果は、スピーディーな文章執筆術と、現在の文章のクオリティアップのための方法だ。
文章のスピードアップとクオリティアップは別々のものだと思うかもしれない。でもこの2つはセットだ。なぜなら、量と質は連動しているから。
質は、量をこなすことで高めることができる。スピーディーに文章を書ければ量をこなせるので、その分質もアップする。
また、質がアップするということは、ある一定時間内に生み出す文章の質がアップするということ。文章に限らず、時間を無尽蔵に投じて高品質なものを生み出すというのは、さほど難しいことじゃない。時間の概念抜きでクオリティアップを考えても意味ないのだ。
そして、質=ある一定時間内に生み出す文章の質と考えれば、質を落とせば、同じ時間でも量を生み出せるという考えに行きつく。質と量はセットなのだ。
たとえば、私がライティングを請け負う場合、平均的な執筆量は1時間2,000 ~ 3,000 文字程度だ。しかし、自分が知見を持った得意分野で、かつクオリティがあまり要求されないといった条件が重なれば、最速で1 時間6,000 文字程度で執筆が可能だ(もちろん、ビジネスで執筆を行っているのでクオリティが要求されないといっても、商品として最低限のクオリティは要求される。ここでの「クオリティがあまり要求されない」というのは、極端に言えば「確実に 100 万部のベストセラーが期待できるような原稿」といった、クオリティ最優先の原稿ではないということだ)。
つまり、スピードとクオリティは変換可能なので、どちらかの能力がアップすれば、もう片方の能力もアップできる。ただ、これから能力アップを図るのであれば、スピードを優先して能力アップしたほうがよい、ということ。
なのでこの本は、文章の総合的なクオリティアップを最終目的としながら、表面的にはスピーディーな文章執筆術について解説していく。
さあ、それでは始めよう! あなたが未来に見る世界を、あなたの文章で変革可能なものへと変化させようじゃないか。
2019年2月 田中 一広