高速で文章を書く! 電撃の文章術【第1章 電撃の文章術】
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文章力アップを目指す方が、本書の内容を納得の上で購入していただくために、総合科学出版にOKをもらい、本書の一部を公開しました!
「第1章 電撃の文章術」より『高速で文章を書く! 電撃の文章術』です。
目次
高速で文章を書く! 電撃の文章術
これまで文章執筆にチャレンジしてきたけど、どうしても書けない……。
あなたもそんな悩みをお持ちだろうか?
もしそうなら、その悩みはいくつかのパターンに分かれている。
最初の段階は、あなたの中に言葉のストックが不足しているという段階だ。
あなたがそもそもビジネス文章だろうが日記のようにプライベートな文章だろうが、1000 字程度のまとまった文章を書くというだけで四苦八苦する……という場合、この段階にいる可能性が高い。もしそうなら、言葉のストックを増やす必要がある。
文章は、どんなものであっても、自分の内側にある言葉を組み合わせて表現する必要がある。
なので、あなたの内側に言葉のストックがなければ、当然ながら文章を作るのに苦労してしまう。
我々は、言葉だけでコミュニケーションしているわけではない。
たとえば、日常生活で「美味しい」と言うとき、声のトーン、声の大きさ、表情、体の動きなどなど、様々な要素がコミュニケーションに関わっている。
驚いたような表情で、大きな声で、立ちあがりながら「美味しい」と言ったなら、それを見た周囲の人は「驚くほど美味しかったのだろう」と思うだろう。
一方、無表情で、ボソボソつぶやくように「美味しい」と言ったなら、それを見た周囲の人は「本当は美味しくないのに、無理して美味しいと言ったのかな?」と思うかもしれない。
つまり、日常生活でコミュニケーションする際、実は言葉の占める影響はそれほど大きくないのだ。
だから、使っている言葉の種類がそれほど多くなくてもコミュニケーションが成立してしまう。
ところが、文章で書くとなると、声のトーンや声の大きさ、表情、ジェスチャーといったものに頼ることはできない。言葉の組み合わせだけで表現しなければいけないのだ。
だから、言葉のストックが少ないと「書けない」となってしまう。
言葉のストックには“横と縦”がある
ちなみに、言葉のストックには「横のストック」と「縦のストック」がある。
「横のストック」というのは、言い換えればジャンルの違い。
「美味しい」と「面白い」のように、全く異なる表現をするための言葉のストックが、「横のストック」だ。
一方、「縦のストック」というのは、同じジャンルの中での表現の違い。
たとえば、『ハチ公物語』と『フランダースの犬』は、どちらも犬を主人公とした物語で、どちらも感動的な作品だ。
日常生活で『ハチ公物語』と『フランダースの犬』の感想を聞かれたら「泣ける」「感動した」と同じ言葉で済ませることもできるだろう。
でもたとえば、もしあなたが映画の批評を行うライターだったとしたらどうだろう?
『ハチ公物語』と『フランダースの犬』のどちらも「泣ける」「感動した」では、原稿は成立しない。
確かに「泣ける」「感動」という観点では『ハチ公物語』も『フランダースの犬』も一緒かもしれないが、2 つの作品では「泣ける」質や「感動」の質が異なるからだ。
なので、「泣ける」「感動」を表現するための別の言葉のストックが必要になる。
たとえば、『ハチ公物語』なら「帰ってこない人をひたすら待つ寂しさに心が痛み、自然と涙が出た」、『フランダースの犬』なら「ルーベンスの絵を見れたことはネロにとって救いだったと思うが、ひたすら善くあろうとしたネロが報われないことに、悔しさの涙があふれた」なんて表現すると、両作品とも同じように「泣ける」ことが伝わりつつ、質の違いがわかる。
要するに、同じジャンルを表現する言葉でも、「より具体的な言葉」と「より抽象的な言葉」があるわけだ。
自分の内側に「言葉のストック」を増やすうえでは、ただ本を「読む」だけじゃなく、「書く」必要がある。
文章は筋トレのようなもので、ただやり方を読んで知っただけではいつまで立っても実力がアップしない。実際にダンベルを持ち上げたり、スクワットしたりといったアクションが必要なのだ。
効率よく「言葉のストック」を増やすためにオススメなアクションが、同ジャンルの本を複数読み、その感想やまとめを自分で書いていくこと。
「ホラー」と「料理」と「コンピューター」のように複数のジャンルではなく、同ジャンルというのが肝だ。
同ジャンルの本を読み、その感想を書いていくと、自然と「縦のストック」は増えていく。『ハチ公物語』と『フランダースの犬』とは同じように「泣ける」けど、どう違うのか? スティーブン・キングの『IT』と、横溝正史の『病院坂の首括りの家』はどちらも「怖い」が、怖さ質はどう違うのか?
同ジャンルの感想を書こうとすると必ずこうした壁にぶつかり、「縦のストック」が増えていく結果になるのだ。
逆に異なるジャンルの本を読んだ場合、こうした壁にぶつからない。この結果、「横のストック」は増えるものの、「縦のストック」は増えない。
けど、実際に文章を書くうえでつまづきやすいのは「縦のストック」不足だ。
「縦のストック」が不足すると、極端な話、泣ける話は全部「泣ける」としか表現できなくなってしまう。それではまとまった長さの文章を書くことは難しい。
最初は週一冊程度のスパンでいい。同ジャンルの本を読み、その感想やまとめを自分で書いていくことを習慣づけよう。
ちなみに、読む本はファッション誌や漫画といった絵の多い本ではなく、文章で状況を説明している活字の本にしよう。
というのも、自分の内側に言葉のストックがない状態なので、まずは外側=本から言葉のストックを得なければならない。
ところが、絵の多い本は言葉でなく絵で説明しているため、言葉のストックを得ることができないのだ。
文章作成のステップを理解する
もしあなたが、言葉のストックが不足している段階を乗り越えているなら、次にぶつかるのは、文章作成のステップを理解していないという段階だ。
家を建設する場合、「よし、今から作るか!」といっていきなり木材を購入し、ノコギリで切り始める……という人はいない。
通常は設計図を作り、設計図から必要な材料を割り出して材料を調達し、材料が揃ったら必要に応じて切ったりヤスリにかけたりといった加工行い、最後に組み立てを行う。……つまり、作成のステップがあるわけだ。
これは家の建設のように大掛かりなものに限った話じゃない。料理にしたって、まずレシピ案をまとめ、材料を調達し、下準備をしてから蒸す、焼く、煮るといったアクションを行う。
もちろん、日常的に食べる料理であれば冷蔵庫を開けて中にあった材料を適当に組み合わせて食べちゃうということもあるだろう。
しかし、商品として提供する料理であれば、必ず作成のステップがある。
文章も同様だ。メモや日記と言った個人的な文章であれば、別に好きなように書けばいい。
しかし、人を楽しませたいだとか、沢山の人に読んでもらいたいだとか、ビジネスに使用だとかいった、ある程度のクオリティが求められる文章には、作成のステップが存在する。
文章作成のステップを理解するうえで重要なのは、文章の価値を「情報としての価値(=ネタ)」「構成としての価値(カタ)」「文章力としての価値(デコ)」の3つに分けて理解することだ。
「言葉のストックは十分あるのに文章が書けない」場合……
・書くネタがないから書けない、
・どのように文章を構成していいかわからないから書けない、
・どのように表現していいかわからないから書けない
……という3つの原因が考えられる。
①書くネタがないから書けない場合
「書くネタがない」というケースは、たとえるなら「何の事件も事故もスポーツもないから、ニュースで報道する内容がない」……ということだ。
そもそも伝えるべき内容がない。なので、どんなに机の前でウンウンうなっていても解決しない。
「情報としての価値(=ネタ)」を手に入れるために情報収集したり、取材したりといったアクションが必要だ。
②どのように文章を構成したらいいかわからない場合
「どのように文章を構成していいかわからない」というケースはつまり、「文章を伝えるために効果的な順番を知らない」……ということ。
たとえば推理小説を思い出してほしい。推理小説は、殺人事件から始まり、捜査シーンに入って情報を入手し、二番目、三番目の殺人が起きて最終的な手がかりを見つけ出し、最後に登場人物全員を集めて「この中に犯人がいる!」……というかたちで展開する。
何も推理小説だけが特別というわけじゃない。恋愛モノなら2 人の出会いから始まり、好意に気づくところを描き、関係が発展するかと見せかけて障害を用意。2 人が一緒に障害を乗り越えるところを描いて交際成立……というかたちで展開する。
物語以外なら、e メール。たいていのメールは相手の名前から始まり、挨拶と共に自分が誰か書き、要件を書いて「よろしくお願いします」で締めるかたちで展開するだろう。
つまり、たいていの文章には基本的な流れが存在しているのだ。この基本的な流れこそが「構成」。
もし「構成」がわからないなら、知ればいい。構成の基本形である「構成としての価値(カタ)」にどんなものがあるのかを知ればいいのだ。
③どのように表現していいかわからない場合
最後に「どのように表現していいかわからないと」いうケース。
このケースは、「結婚してください」という告白の言葉をどう伝えるのか悩んでいるようなものだ。
昭和の男尊女卑の時代じゃあるまいし、「毎日ぼくの味噌汁を作ってください」なんて告白は今時あり得ない……。
かといって、一生に1 回の記念すべきイベント(多分)だから、フツーに「結婚してください」では芸がない……。
この悩みは、恐ろしく時間がかかる。
何故なら、本来の「伝えるべき意味」とは別の言葉を使いつつ、本来の「伝えるべき意味」を伝えようとしているのだ。
言ってみれば目的地を直接目指すのではなく、別方向に向かいながら、でも同じ目的地に着け……といっているようなもの。無理難題ってヤツだ。
このケースを解決するためには、そもそもボキャブラリーを増やすか、凝った表現を諦めるかの決断が重要だ。
目的地を目指すというたとえになぞらえて言えば、ボキャブラリーを増やすというのは、道を沢山覚えるということ。
目的地への直接ルートが通行止めになったとしても、裏道を沢山知っていれば、効率よく迂回できる。だから、道を沢山覚えよう……というわけだ。
道を覚えるためには地図を見たうえで実際にその道を辿るほかない。沢山の道を覚えようというなら、沢山の道を辿るしかない。なので、膨大な時間がかかる。